自観申す

心霊現象叢談(三)

(本文省略)

右のウォルター氏の指紋の実物を、私は十数年前見た事がある。それは故浅野和三郎氏主宰の心霊研究会の集りの時であった。勿論私は会員であったからで、その時は浅野氏が欧洲心霊行脚から帰朝早々の時で、お土産として持って帰ったのである。同氏の話によれば、ウォルター氏指紋の実際を見学し、土産として持って帰ったのである。其時の状況を斯う語った。初め直径三寸位の木製の板の上に、恰度、歯医者が用ひる赤色のアマルガムのようなものが、厚さ五分位に粘着しており、初めテーブルの横から、幽霊の手だけが見え、右のアマルガムへ触れようとした時、空中に声あり。「固いから今少し柔くしてくれ。」というので、温めて柔くすると、再び静かに手首が表はれるや、極めて力ある動作で拇指を、アマルガム深く捺したのである--。という話であった。私はよくみると、成程、幽霊処ではない。生きた人間が相当の力で捺した如く、二三分位の深さで、はっきりと指の形があるので、実に驚いたのである。

(地上天国十二号 昭和二十五年一月二十日)