医学談片集 変な話(三)

之も歯痛当時の話、某歯科医学士に、私の慢性歯痛を診て貰った。彼曰く、「必ず治るから二週間来て御覧なさい。」私はその通りした。

少しも快くならないので訴えた処、彼は、「仮え痛みはあっても、歯の病の方は大分よくなってゐる。」といふので、私は変だと思った。『歯の病なんかはどうでもいい。痛みさえ治ればそれでいいのだから……。』

(地上天国十号 昭和二十四年十一月二十日)