医学談片集 変な話(二)

私は以前歯痛で悩んだ時、その前日薬の綿を詰めた為と思ったので、歯科医に、『それを除って貰いたい、そうすれば治ると思ふ。』と言ったら歯科医は-「そんな訳はない、明日まで待ってくれ。」といふから、翌日行った処、彼曰く、「昨晩ドイツの凡ゆる本を調べた処、その薬で痛んだ例がないから痛む筈がない。」-と言ふので私は『筈がなくても痛くて仕様がないから除ってくれ。』と言ったので、渋々除ってくれたがそれで痛みはなくなった。

(地上天国十号 昭和二十四年十一月二十日)