医学談片集 変な話(一)

以前聞いた話だが、或医師の息子が盲腸炎に罹り、早速手術した処死んで了った。そのお医者さん曰く、「実をいえば、医者の伜でなかったら助かったかもしれない。といふのは医学上あの場合手術をすべきが医師としての常識であるからで、手術をしない訳にはゆかなかったのだ。」とは、変な理屈もあるものだ。

(地上天国十号 昭和二十四年十一月二十日)