斯ういふ事があった。或中年の婦人、頭の中に何かがゐて、始終しゃべってゐる。それがうるさくて時々気違いになりそうになる-という症状、で、其頃の帝大○内科に一年入院したが、少しも良くならない。其時博士曰く、「あなたの病気はもう治ってゐるから退院しなさい。」と言ふ。
妾は、苦痛は少しも快くならないといったら博士は、「あなたの身体をいくら診察しても、悪い所は少しもない。」と言ふので、『変だ』と思ひ乍らも退院したといふ話で、私は二ケ月ばかり治療したら、すっかり治って了った。之は唯物医学の欠点で、病原は眼に見えない霊である事を知らないからだ。
(地上天国十号 昭和二十四年十一月二十日)