医師が電療に反対する

以前、某大実業家の夫人が顔面神経麻痺で化物のようになったのを頼まれて浄霊した事がある。数日後その夫人の話によれば斯うである。『先生私は先生を信頼しておりますが子供達が一度専門家に診て貰えといふので、予ねて眤懇(ジッコン)の○○医大の○○博士に診て貰った処、博士からどういう療法をしてゐるかと訊かれたので「実は掌で治す霊気的療法というのをやって貰っております」というと、博士は「それは結構だ、その病気は放ってをいても二年位で治るものだ、然し、電気療法をやると反って治らないから、電気療法は決してやってはいけないよ」といふので、私は「あなたの病院であなたの部下のお医者様が電気療法をしようとするのでお断りしたんですよ」と言ったら、博士は「それはよかった」との事でしたから之からは大ピラで先生にお願ひ出来ます』といふので、私は変な話と思った。そのやうな訳で、浄霊を続けた結果二ケ月位で全治したのである。

茲で面白いのは、右の博士は当時有名な大家で、その頃百人以上の博士を造った記念祝いに右の夫人が招かれたといふ事であったにみても、某博士の名声は判るのである。その博士が電気治療を否定するにも拘はらず、その部下の医者が電療を勧めるといふ事は、何が何だか判らない事になる。

右の博士は、よほど変った人で、逸話が沢山ある。私は右の夫人からよく聞いたものである。その中に斯ういふのがあった。その夫人が某家の子供の病気の際博士を紹介した処その時博士曰く「嗚呼此の子供はもう助からない、治療しても駄目だ」と言ったので家族のものは、何とか助かる工夫はないでしょうかと訴えた処、博士曰く「貴女の所は子供が何人ありますか。何、五人ある?それでは一人位減ったっていいじゃないか」といってサッサと帰って了ったとの事で、その家では飛んでもない医者を紹介してくれたといって立腹したそうである。

右の一例で判る如く、兎に角、脱俗的な処があった。然し何となく凡俗を抜いた人で医師会では、一方の大御所であったといふ事である。

(救世五十三号 昭和二十五年三月十一日)