医学断片集(二十七) 医師の無責任という言葉

よく御蔭話にもある通り、医師を無責任だといって憤慨する人があるが、これは本当のことを知らないから、そう思うのも無理はないが、事実はこうである。それは医師も良心的に治そうとして一生懸命治療をするのだが、思うように治らないので、冷淡にならざるを得ないからつい悲観的のことも言うのである。又患者の方では、最初何週間で全治するとか、入院すれば必ず治るとか云われているので信用していると、経過は丸っきり違い、予想以上の医療費を使いながら段々悪化し、遂に命までも危くなるので医師に訴えるが、医師の方でもこれ程熱心にあらゆる方法を尽しても駄目なので、何が何だか分らなくなり、満足出来るような返答は出来ないのである。

以上のような事実は常に聞くのであるが、では一体原因は何処にあるかというと、いつもいう如く現代医学は非常に進歩したようにみえても、実際は反対なくらいであるから、お医者さんこそ全く気の毒なものである。

(栄光百九十二号 昭和二十八年一月二十一日)