調和の理論

昔からよく調和という事を言われるが、之を単に聞くだけではいゝ意味にとれ、道理の様に思われるが、実は之を丸呑みに出来ない点がある。というのは成程全然間違ってはいないが、此考え方は浅いのである。そこで之を深く堀下げてみると斯ういう事になる。抑々此大宇宙の一切は悉く調和していて、寸毫も不調和はないのである。従って人間の眼に不調和に見えるのは表面だけの事である。何となれば不調和とは人間が作ったものであって、其原因は反自然の結果である。即ち大自然からいえば、反自然によって不調和が出来るのが真の調和であり、之が厳正公平な真理である。此意味に於て人間が天地の律法に遵(シタガ)いさえすれば万事調和がとれ順調に進むのである。

右の如く不調和を作るから不調和が生れ、調和を作るから調和が生れるのが自然の大調和であるとしたら、人間は之を深く知る事で、之に依て幸福者となるのである。何よりの証拠は今は不調和であっても時が経てば調和となったり、調和だと安心していても、いつの間にか破れて不調和になる事がよくあるのも、世の中の真相である以上、よくよく味わうべきである。換言すれば不調和とは小乗的見方であり、調和とは大乗的見方であると心得べきである。

(栄光百七十六号 昭和二十七年十月一日)