よくお医者は、「貴方の病気は大したものではありませんよ。苦しいのは神経の所為(セイ)ですよ」と云われるのは知らない人はないであろう。処で其言葉をよく考えてみると、斯ういう事になろう。苦痛のある程の病気でないのに、苦痛を感じるとしたら、其神経は病的である。つまり異常神経となっているのであるから、それを治すのがお医者の責任ではなかろうか、此例として時々そういう患者に出合す事がある。曰く「お医者は何ともないと曰われるが、私は苦しくて仕方がない」という人や、中には「貴方の病気はもう治っている」と曰われるに拘わらず、「まだ苦しいのです」という人がある。
(栄光百四十九号 昭和二十七年三月二十六日)