我日本が、将来世界を統治すべき使命のある事は、如何なる点から観ても肯定し得らるるのであるが、その最も特質とすべきものは万世一系にして、金甌(キンオウ)無欠の皇室を戴く事であり、又、東西両文化を遺憾なく吸収して、綜合調和する、不思議な国民性である。彼のイプセンが唱へた第三帝国とは、日本の将来を予告したとも言へるのである。然し乍ら、日本の世界統一は、飽迄覇道的、侵略的ではない、全く天地の方則に適った道義的統一である。万国が屈従するのではない、悦服するのである。そんな途方もない事が、事実出来るであらふかと、疑ぐるであらふ、そして、一体誰がそんな大きな事をするのか、その事業を、運動を、何人の手に依て遂行するのであるか。
日本は本来、世界の祖国である。天地創造の際、最初に胞衣(エナ)として造られたる国が、日本である。故に、全世界の雛型である。例えば、我本州は、欧亜大陸に当り、北海道は北米に、台湾は南米に、九州は阿弗利加(アフリカ)に、四国はオーストラリヤに当る等である。其他、山川島嶼(サンセントウショ)等、仔細に点検すれば、悉く雛型になってゐる。
彼の明治の王政維新は、実は日本だけの事件ではなかったのである。之が終に進展して世界的王政維新になるのである。
日本が、日本天皇が、世界を統治遊ばさるる前、先づ、世界の雛型たる日本に、これが現はれなくてはならない。何百年、武家が擅(ホシイママ)にしてゐた政権を奉還し奉り、爰に、本然に立還って再び天日暉(カガヤ)く事になったのが、王政維新であった。斯事を今後の世界に、当て嵌めて考へれば、明確に判るであらふ。
日本が満洲と結び、今や、日支和平工作に迄進み、亜細亜の盟主たる偉容を、如実に現はして来た事と、欧羅巴(ヨーロッパ)が日に月に、崩壊作用に向って進みつつある実状を観たら、凡そ判るであらふ。日本天皇陛下が、世界を統治被遊(アソバサ)るるとすれば、その御統一の中心地点は、無論、我東京である。
天祖天照皇大御神が、天の時到って、世界統治の大経綸を遂行なさるに就ては、その実行機関と幾万の選ばれたる人がなくてはならない、それは軍人も政治家も産業家も力を協(アワ)せなくてはならない。世界人類を、道義的に救ひ服(マツ)ろはせるといふ事は、寔に崇高にして、聖なる事業である。それにはどうしてもより宗教家の活動を要する事である。
世界統一は、日本天皇の大御稜威に依って成るのだ。
大御稜威とは尊い光が八紘に輝く事である。此御光をば、全世界に、伝達する人民の活動として、即ち我観音運動が生れたのである。
尊厳にして犯すべからざる、大君は、雲の上に日月の如くに輝きゐますのである。世界統一に就ての御軫念(ゴシンネン)は、些かも動かせ給はぬ事を仰ぎみるのである。
それは、天祖大神の深甚なる経綸と人民の忠節による、舎身的活動によって成るのである。
世界統一といふ、空前なる大業であるから、如何に愛と慈悲を以てするも、偶々不満の国又は民が、些かも無いとは保證し難(ガタ)いであらふから、夫等は、飽迄、人民が責任を負はなければならないのである。
(観音運動 昭和十年九月十五日)