茲で、医師会なるものに就て一言いはして貰ひたいのである。それは今日迄の如き、西洋医学のみの団結を革(アラタ)め、総ての民間療法も抱擁して、相互の特長を研究錬磨し、その結果として日本独特の医学を樹立すべきではないかと惟ふのである。元来医師会の成立は随分古いものだそうである。勿論明治時代、日本が欧米の唯物的文化を無差別的に移入した時代の機構として又やむを得なかったのであらう。
然し乍ら、日本が世界の本舞台に登場せざるを得なくなった今日、どうしても吾吾日本人として生を稟(ウ)けたるものは日本独特の文化を創造し、それによって世界的指導者たるべき使命を課せられたといってもいいのであるから、医学と雖も勿論日本独特の医術を創建しなくてはならない機運となった事は勿論である。
それのみではない。西洋医学の唯物的方法を以てしては、国民の体位も人口問題も結核問題も解決は困難であるといふ事があまりにも明白になりつつあるといふ事実である。それ等によってみても医師会改造問題の切実である事を爰に私は提唱するのである。
(明日の医術 第二篇 昭和十七年九月二十八日)