熱帯病に就て

今日、大東亜共栄圏確立に就て、衛生的見地からみる時、熱帯病克服が、最重要問題である事はいふ迄もない。然らば、マラリヤを初め、デング熱、カラザール、其他何々等の熱帯病は、如何なる原因によって発生するのであるか、それらを本医術の見地から解釈してみよう。

抑々、人間の健康なるものは、その風土気候に順応すべく造られてあるのである。従而日本人が熱帯地に行った場合、その風土に順応すべく、身体自身が変化を起すのである。特に従来生活しつつあった内地の気温より温度が強烈である場合、それに対応なし得る健康を必要とする。それが為どうしても浄化作用が、発生するのであって、その浄化作用が熱帯病なのである。故に放任しておけば短時日に必ず治癒し免疫となるのである。然るに薬剤を使用し、浄化作用停止を行ふ時は、一旦治癒しても何時再発するやも知れない事になるのである。以上の意味によって、他の幾多の風土病の原因も、大方は右と同様であると思へば間違ひはあるまい。

(明日の医術 第一篇 昭和十八年十月五日)