種痘は如何にすべきや

私は、国民体位の低下と、凡ゆる病気は種痘が主なる原因であるといふ事を説いたのであるが、然らば、種痘を直ちに廃止すべきやといふに、それは勿論困難である。何となれば、折角天然痘疾患を免れ得てゐる現在の人間が、再び天然痘に罹病するといふ事は、堪え得られぬ苦痛であるからである。此意味に於て、私は漸減的方法を採ればいいと思ふのである。それは先づ薬剤の廃止を行ひ、人間から薬毒を漸減せしむる事である。勿論、本療法を施行すれば早いが、そうでなくとも自然によっても漸減する事は言ふまでもない。そうして人間の体位向上に比例して種痘を減少するのである。それは毒素の有無によって明かであるから、その毒素の有無を確実に知る方法があればいいのである。然るに、それを知る方法としては、本医術を修得すれば、何人と雖も容易に発見し得らるるのである。そうして腎臓医術の項目に詳説した如く、腎臓の活動を完全にするに於て、如何なる毒素も排泄され得るのであるから、天然痘毒素と雖も解消する事は勿論である。右の如くにみて、種痘廃止といふ問題も、左程困難でない事を知るであらう。

(明日の医術 第一篇 昭和十七年九月二十八日)