西洋医学の大誤謬 対症療法の不可

病気の原因に就て、西洋医学は、未だ何等確定的発見がない。故に、病理としては、肉体に現はれたる現象に病名を附し、其進行過程を、説明するに過ぎないのである。従而、其療法としては、現象に対応する、対症療法が、主である。対症療法とは即ち、苦痛の軽減である。然し、苦痛の軽減と治癒とは、全然、別問題であって、苦痛を軽減する事に由って、病気が治癒されるとなす事は、一大誤謬である。

苦痛を軽減する対症療法が、何故に誤謬であるかを説明すれば、次の如くである。元来、病気の苦痛、例へば、発熱、咳嗽、痛み、嘔吐、眩暈、不快感等、夫等の現象の本体は何であるか、病気の発生には、発生すべき原因があり、病気の発生するや、同時に苦痛の発生も、その理由があるべき筈である。要するに、病気の発生は、或原因に対する結果であり、其結果から生ずる結果が、苦痛である故に、苦痛の本質と、病気の原因が、徹底的に分明されないとすれば、真の治療は確立する訳が無いのである。西洋医学は、病原不知なるが故に、止む事を得ず、結果の結果である処の苦痛軽減にのみ没頭し、専念しつゝあるものである。故に、それによって治療せらるゝ患者は、実は、対症療法に依って、苦痛を軽減されつゝ、人体自身の自然治癒力によって、治癒されるのであるから、一種の自然療法でもある。

斯の如くにして、苦痛軽減の対症療法を受けつゝ、自然治癒さるれば、苦痛軽減丈けの効果があるから可いが、茲に、又、一大誤謬が潜んでゐる。それは、苦痛軽減の方法として、薬剤と器械を用ひる。此物質的方法による、苦痛の軽減は、其結果として、何倍の苦痛増加になるといふ事である。一時間の苦痛軽減は、軈て、五時間も十時間もの、苦痛加重となる事である。私は、斯様な事を言えば、或は奇を好む逆説とも、解(ト)らるゝであらふが、然し、事実は事実として、一点の誤りがないから、何程でも、実證するに吝かないのである。

(明日の医術 昭和十一年五月十五日)