肺炎

之はよくある病気ですが、診査も至極簡単であります。

肺臓の下部即ちちょうど「乳の下」に当る個所、そこへ膿が溜る。即ち「痰」が溜るんであります。

手をあてると「乳の下」だけが特に火のやうに熱いので、すぐに判るのであります。

症状は、喉がぜいぜいいって、咳と痰が非常に出る。熱は四十度前後であります。 原因は浄化法の最も急激徹底したもので、要するに「風邪の重いもの」と思へばいいのであります。ですから、肺炎は寧ろ健康の人に起ります。つまり“健康だからおこる”訳です。

先づ、大浄化法が行はれる訳で-

「風邪」の熱で溶解された-頸部及び肩部の膿が、胸部一帯に氾濫すると、其重味によって一旦肺の下部に溜る。そして尚も熱を以て溶解され、痰になって肺胞を通過して出るのであります。

それで喘音のあるのは、肺に痰が滞溜してゐる為であります。

右の方が鳴る時は右肺、左の方が鳴る時は左肺に痰があるのであります。

治療の場合は、乳の下の浄化をやればとても簡単に治るのであります。そして間もなく平熱になるのであります。

肺炎を平熱にしよふとして、一時間位治療すれば一回でも治るのであります。

私は肺炎の患者を働きながら一週間で治した事があります。

肺炎から喘息になる場合がよくあります。それは-肺炎の時、解熱剤を使用する為、溶け損ねた痰が下降して、喘息部に滞溜するからであります。

肺炎が拗れるのは、解熱法の為であります。肺炎の痰が溶解され損ねるから、外部へ排泄する力を失ひ、肺臓の中途で停滞するからであります。

こういふ人は、非常にラッセルが聞えるので-肺結核の進んだやうに思はれる事がよくあります。

此痰は、一旦浄化作用をされた痰ですから、非常に溶けやすいのであります。 肺炎が治ったと思っても、未だはっきりしない人がある。そういふ人は「乳の下」がやはり熱い。そこに残ってゐる訳であります。

肋膜肺炎といふのがありますが、之はやはり、膿が下部へ溜ったのが溢れて、幾分肋膜へ滲出するからであります。

之も治癒は非常に速かであります。

小児にも多いんで小児肺炎といひます。

(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)