癲癇は、精神病と等しく原因は憑霊であるが、ただ異る所は癲癇は一時的発作的である事と、その症状が多種多様である事とである。そうして癲癇の殆んどは死霊の憑依であるから、発作するや死の刹那の状態を表はすのである。例へばよく泡を吹く、之は水死霊で俗に謂ふ水癲癇であり、火癲癇は焼死者の霊であり、又脳溢血によって急死した霊も多いが、之は半身麻痺状態になるからよく判る。其他変死者即ち轢死、縊死、墜死、銃死等々、凡ては死の刹那の苦悶の状態そのままを表はすのである。近来医学に於て癲癇療法として、頭脳の切開手術を行ふ医家もあるが之等は患者に苦痛を与へ、不具者となすだけで寸効もないのである。何となれば原因は霊作用で、全然見当違ひであるからである。次に夢遊病者といって、発作するや自己意識を失ひ、家を飛出し、所定めず彷徨するといふ始末の悪い症状であるが、之等も一種の癲癇であって、此憑霊は幼児の霊である。
癲癇の例として、数年前から私の家に使用してゐる下婢の事を記いてみよう。之はよほど面白い例で、最初の頃は発作するや意識を失ひ、所構はず倒れるが、その際の面貌は物凄い程で、顔面蒼白、唇は紫色になり、舌を噛み口唇から血液が流出してゐる。その状宛かも殺害された死人と少しも異らないのである。それが本医術によって漸次快方に趣き、近来の発作は極軽微で意識を失ふ事はなく、多少の不快を伴ふ位である。其際前額部深部を霊射するや、憑霊は悲鳴を挙げ『助けてくれ-』と繰返す。私は『助けてやるから此肉体から出よ』と言ふと『行く所がない』といふ。憑霊が行く所といふのは人間である。此場合全然他人では憑る事が出来ないから始末が悪い。そうして右の下婢を施術するや前額部へ霊射二三分にして肩、腕、腹部等へ次々と移動する。面白い事にはその局部を圧査すると必ず毒結がある。そうして憑霊の逃げ廻るのを追かけるやうに一々霊射する結果、霊は極度に萎縮し、苦痛は一時解消するのである。此の下婢の霊は、祖母にあたる者が不義の子を宿し、出産するや圧死させた。その嬰児の霊である。その嬰児の霊へ、祖母に関係ある狐霊が憑依し、同化霊となって活動するのである。
(天国の福音 昭和二十二年二月五日)