腎臓医術と若返り法

本医術は一言にしていへば腎臓医術ともいへるのである。曩に詳説した如く、病原としての毒素は然毒、尿毒、薬毒の三種で、その三毒が最も作用する局所としては腎臓である。先づその順序を説いてみよう。

人間が此世に生を享けるや、既説の如く先天性毒素としての然毒が、先づ背面腎臓部に集溜する。嬰児と雖も殆んどは背面腎臓部に相当の毒素を保有してゐる。幼児の起歩きの後れる原因もその為である。そうして人間は成人するに従ひ、然毒の凝結圧迫により腎臓は萎縮し余剰尿が溜結、何等かの病気発生となり、それの浄化停止の為薬毒を使用する。即ち以上三毒の圧迫加はり、腎臓はいよいよ萎縮する。元来腎臓はホルモンの製出と、生理的残渣を尿によって排泄するといふ重要機能である以上、腎臓萎縮は全身的浄化微弱とホルモンの欠乏を促す。その結果としての老衰は免れ得ない。此理によって人間の元気旺盛なるは腎臓機能の活溌に因るのであるから人間の強靭なる健康こそ、全く腎臓の強盛に正比例するのである。

腎臓が完全なる活動状態となるに於て、先づ全身が軽くなり挙措敏捷となる。頭脳は明晰となるから能率は増進する。仕事に当って倦(ウ)む事を知らず、且つ困苦に堪へ、万事楽観的となり、常に爽快感を保つから怒る事を厭ひ協調的となる故、人から愛敬され、成功者となる訳である。

又婦人にあっては浄血の持主となるから著しく美を増し、不断の快感は接する人に好感を与へ、ホルモンの増加は著しい魅力を発揮する。故に夫婦は円満となり、家庭内の風波は起り得なくなる。又老年者と雖も先づ二十年は若返るであらう。其結果として普通九十歳以上の長寿者となる事は敢て難事ではない。

私は、人類の腎臓を完全たらしむるに於て病者の絶滅、出産の増加は勿論、戦争の絶滅をも期し得らるる事を信ずるのである。何となれば完全なる腎臓は完全なる健康体となり、完全なる精神を持ち得、完全なる精神の持主は闘争を厭ひ、平和を好み怠惰を厭ひ、利己愛を捨て、すべて常識的に事を処理するといふやうになるからである。

私は思ふ。本医術を他所(ヨソ)にして世界の真の平和の実現は得られないであらう事を。

(天国の福音 昭和二十二年二月五日)