冷への原因は局部的発熱に因る悪寒又は局部的毒結による血液不循環の為である。多くは腰、下腹部、脚部、足の甲及び指先等で、特に婦人に多いが、之等は毒結を解除すれば解熱及血液が循環するから簡単に治癒するのである。
便秘は非常に多い症状で、且つ長期に渉って苦しむが、此原因は腹膜部に毒結があり、それが直腸を圧迫する。その為糞便が直腸管を通過し難い為で、之等も毒結溶解によって容易に治癒するのである。そうして便秘症の人は常に下剤を服用して辛(カラ)くも目的を達するが、此方法は非常に不可である。何となれば之が習慣となり、便秘は漸次悪化し、下剤服用によらざれば排便が困難となるからである。而もそれが長年月に渉るに従ひ、増悪し畢には下剤の量を多くするか、又は異る下剤によらなければならない事になる。而も下剤の薬毒が累積し、種々の病原となるのである。元来人体は上から食物を入れ下から糞便が出るのは自然であって造物主は其様に造られたのである。故に如何なる人間と雖も食餌を入れる以上、糞便は排泄するに決ってゐる。ただ人により一日一回もあれば、二日に一回もあり、一週間に一回の人もある。それでいいのである。
然るに医学に於ては便秘は健康に害ある如く誤認し、毎日便通がなければならぬやうに宣伝するので、一般人は便秘を恐れるあまり、便秘すれば神経的に不快を感ずるので、下剤使用となるのである。然るに下剤によって排便する以上、排便機能は退化するから便秘する。便秘するから下剤を使用するといふ悪循環となり、畢に下剤なしでは生きてゆかれないやうになるのである。よく発熱時便通を付ければ解熱するといひ下剤を用ひるが、之等も反って治癒妨害となり全治を鈍らす結果となる。又或種の病気は反対に下剤によって高熱に導く事さへある。
便秘が何等懸念すべきでない事の実例を示してみよう。私が以前胃癌の患者を取扱った際、便秘廿八日間に及んだが病気には何等影響が無かった。それは全治し数年後農業に従事し、健康である事の報告があったにみても明かである。又私が扱った患者の中で、二ケ月間の人と六ケ月間便秘の経験を持った人の談によれば、孰(イズ)れも便秘による何等の影響もなかったとの事である。其後某婦人雑誌に掲載されてあった実例に、二ケ年の便秘で之もその為の異常のない事が書かれてあった。
又医学に於ては、便秘を放任しておくと自家中毒なるものを発生するといふが之等も誤謬である。此説は多分、便毒が血液中にでも混入するやうに想像したのであらうが、此様な事はあり得べからざる事で事実は宿便は時日を経るに従ひ、増々硬化するだけの事であるから悪影響などはないのである。
次に乳幼児に対する灌腸(カンチョウ)で、これは恐るべきである。嬰児の中から灌腸する結果、一種の灌腸中毒となり、灌腸に依らざれば排便不能となる例がよくある。その結果として、三四歳頃になると、少し便が溜ると腹部膨満し苦しむので、止むなく灌腸して一時的緩和を計るのであるが結局は死にまで到るのはいふまでもない。之によってみても、灌腸などの不自然極まる人為的方法は、断然廃めるべきである。
(天国の福音 昭和二十二年二月五日)