昭和六年九月十八日柳条溝に始まった満洲事変を契機として、同十二年四月七日蘆溝橋に於て点火せられた支那事変、次いで一九三九年九月一日始った今回の欧洲大戦と、それによって巻起った凡ゆる文化形態の極まりなき変化を観る時、何人と雖も今や全世界は容易ならぬ大転換期に直面しつつあるといふ事である。
古往今来、一切は動くべき理由によって動く。原因があって結果があり、国家の興亡も思想の動向も、建設も破壊も、分裂も統合も変化極りなき推移は、此現実は何が為であらうか。そうして今日人間は表はれた事象によって驚歎し、畏怖し、混迷し、その帰趨を知らないといふ状態である。実に世界史上、空前ともいふべき時代である。
(昭和二十年)