此標題の如き飛行機の説明に当って、最も困難と思ふ事は、現実とあまりに隔絶してゐる事である。先づ一般の人達が之を読む時、一個のお伽話か夢の国の話か位として人を馬鹿にしてゐるとさへ想ふであらう。押川春朗式の冒険小説と雖も、之れ程非現実的ではないであらう。然し乍ら、もしいささかなりとも現実的効果を発揮し得たとしたなら、恐らく世界を震撼すべき大問題となるであらふ。此意味に於て、此論文は現実的効果を確認してから読むべきが本当であると思ふのである。以上の如き神変不可思議なる秘密兵器である事を、聊かなりとも信じて読まれたいのである。
無形飛行機とは斯の如きものであるから、無論不可視的なるものであって、如何なる精妙な機械と雖も捕捉探知し得ざる事は勿論である。然し乍ら、新兵器神秘光線の原理の説明にある如き幽玄力の変化によって、有機的に飛行機の性能を現出して、一種の活動力を発揮するのである。最も判り易くいへば無形の飛行機が敵機に体当りするのである。而もそれが確実に敵機を墜落させるのである。
右の如く無形である以上、味方に於ては何等の損失も犠牲もないのみならず、何千機何万機と雖もその生産に一ケ月とはかからないのである。
そうして此原理は、一層詳細に説明なし得るが、現代人の頭脳にてはその解釈は到底不可能の事と思ふから、此以上の説明は無益と信ずるのである。万一、此無形飛行機が些かなりとも偉力を発揮し得たとしたら、今次の大戦と雖も時を出でずして、解決なし得る事はいふまでもないであらう。
(昭和二十年)