日置昌一氏との御対談 ビフテキ食べてかいた画

近藤氏 美術は主に古美術ですか、それとも近代美術の方ですか。

明主様 両方やってますが、現代美術はいけないです。それでつい古美術の方になるのです。

日置氏 どうも精神的なものがないですからね。手先の技術ですからね。

明主様 現代の画家の画は筆に力がないのです。それは現代の美術家の不断の生活が違っているのです。力というものは食物が大いに影響するのです。ビフテキを食べたり牛乳を呑んだりしていては力は出ないのです。それで仕方がないので塗抹絵になるのです。今のはそれです。

近藤氏 外国の古い絵などは如何ですか。

明主様 油絵にも良いものがあります。イタリーあたりには素晴しいものがありますが、私の持論は外国の絵は芸術ではなく、芸術と工芸品の中間のものだと言うのです。遠慮なく言えば高級家具です。それで日本画とか東洋画は本当に楽しむものです。そうして季節によって換えるという風に、本当に芸術を楽しむというものです。西洋のは年中同じもので、中には一生涯一つのものを掛けている人もあるそうです。 

日置氏 宗達あたりの、あの雄大さというのは芸術と言うより精神力ですね。ああいうのは現代の画にはないですね。特にお宅では宮本武蔵の達磨と牧谿の「かわせみ」をお持ちとの事ですが、あれは名品ですね。

明主様 宋時代のは殆ど坊さんですから、坊さんというのは、山に入って菜葉に麦飯を食って行をした。それが画くのですから断然違うのです。要するに菜食して精進せねば駄目です。

日置氏 画くのでなく気魄ですね。

明主様 そうです。宮本武蔵も剣を筆に変えたものです。宮本武蔵の絵には私は頭が下りますよ。

日置氏 今の人のは生前は値段は高いが、死ぬと下ってしまうのが多いですね。

明主様 いや、生きているうちに下っているのがあります。横山大観のは、私は二、三年前までの物は買いますが、今のは駄目です。アル中だからでしょうね。

(昭和二十七年十二月十日)