策動に乗らず進め
記者「ことしの景気はどうなりますか」
大先生「まだまだ、日本の財政はやりくり算段だから楽にはならない。だがこれ迄物価が賃銀をリードしていたが、漸次その均衡が保たれてきそうだからかつてのようなひどいインフレはもう来ないと思う。現在の生産力が、戦前の六、七割程度を挽回してきたようだから、軍需のない現在の日本は殆んど戦前同様の状態に還っているともいえる。だが、貿易が不振で滞貨が多いため、物が動かず、国内消化力も勿論増さないから一応不景気の様相を呈するであろう。この際無駄を排し、貯金をしておけば、いかなる破局にも打勝つことができる」
記者「ことしの政治的見透しは如何でしょう」
大先生「私は政治には興味がないが、いまの日本に大政治家を求めるのは困難だ、吉田さんあたりはまづ日本にとっては第一人者と思う、相当の見識もあり、強さもある。私は個人的には吉田さんのように迎合しない人が好きだ、ことし一ぱい吉田さんにお任せしておけばまづ無難でしょう」
記者「終りに全信徒への御言葉を賜りたい」
大先生「年変れど改めていう言葉もないが、ためにせんとする策動に乗じられることなく意を安んじて、神の道に、虚心坦懐、精進することを呉々もお願いする」
(昭和二十五年一月一日)