氷冷法

氷冷法は最も不可である。高熱と雖も氷冷しないに限る。何となれば、患部を氷 冷する時は、自然治癒作用は、停止されて了ふからである。一例を挙ぐれば、中耳 炎の場合、中耳炎は膿汁が排泄されよふとして、中耳内に侵出し、それより外部に 出でんとする。其為の痛みと高熱であるから、此場合患部を氷冷すれば、膿は中耳 に向はずして、方向転換をするのである。それは後脳へ移行し、脳膜炎を起すので ある。中耳炎丈で済むべきを、脳膜炎を併発させるといふ、それは氷冷するからで ある。
又、盲腸炎を氷冷するとする。氷冷しなければ、高熱に依て膿溜は解溶され、便 となって排泄し、治癒されるのであるが、氷冷の為に其作用は停止されるから、治 癒が非常に拗れるのである。それが為に手術を要する様な結果を、招来する事にな るのである。
他の疾患に於ても、大同小異であるから略する事とするが、唯、高熱によって頭 痛の場合、水枕位は差支えないのである。