尿中の毒素を医学では尿酸と謂うが、私は之を尿毒と謂っている。 ドイツの或学者は、「万病は尿酸が原因である」とも謂っているが、今でも此説は相当認められてをるやうである。
人間が作業するにおいて腰部に力を入れる関係上、腎臓部に薬毒や然毒が溜結するのである。之はゴルフ愛好者に特に多いのにみても瞭かである。此溜結が腎臓を圧迫する為に、腎臓が萎縮するのである。したがって、その萎縮の程度によって、例へば完全腎臓は十の尿を処置し得らるるのが、萎縮腎臓は、その萎縮の程度、例へば、九の尿を処置するとすれば、一の尿は体内に滞溜するといふ訳で、その余剰尿“一”が即ち尿毒である。
此尿毒も他の毒素と同じく、神経集注個所へ溜結するが、此毒素は特に位置の関係上、腎臓部、腹部、股間淋巴腺、腹膜、肩部（肩の凝り）、頸部等へ集溜し勝ちである。但し、左右何れか萎縮する方が、尿毒の滞溜が多いのである。潜在的に保有する天然痘毒素には限りがあり、薬毒も使用するだけのものなるが、尿毒に於ては、二六時中間断なく製出するものなる故、此点特に始末が悪いのである。此尿毒と併せて、大体三毒が凡ての病原となるのである。
リョウマチスで、赤く腫れないのは此尿毒が原因で、私は之を腎臓性リョウマチスと言っているが、非常に治り易く、此尿素は割合に弱性で、溶解し易いものである。尿毒といふものは、あらゆる病気になる。よく腎臓が悪くて肩が凝る人があるが、之は矢張り、尿毒が肩へ集る人である。足が重倦く痛む人など、皆此尿毒が下の方へ垂溜する為である。最も多いのは、尿毒が腹膜へ溜るので、そして其所で凝る。之は、腹部を圧すと必ず痛む所があってそこにある。此尿毒は、肋膜、喘息の原因となる事もあるのである。ですから腎臓の為に喘息を起し、喘息の為に心臓が起るんですから、間接には、腎臓が心臓病の原因になる訳でもある。
尿毒（医学試稿 昭和十四年）
尿毒について（岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月