癲癇には二種類あって、体的と霊的とあります。先づ体的原因からお話致しませう。延髄附近に水膿溜結する為、脳へ送流される血液が阻止される。それが強烈な場合、血液が中断される事がある。其瞬間癲癇症状を起すのであります。此症状は、膿結溶解によって容易に治癒するのであります。
今一つは霊的の場合で、此方がはるかに多い事と悪質であります。 霊的の原因は「死霊」が憑依するので、「死の時の苦悩の状態」そのままを表はすのであります。多くは変死又は急死であります。脳溢血での死霊は、特に多いのであります。発作が起ると「脳溢血で仆れる状態」その儘をする。それは-脳溢血などで急死した霊は「死の準備」がないから「自分が何時迄も現世に在るつもりの想念」でゐる。其為、生きた肉体を見付けて憑依するのであります。仆れて泡を吹くのは「水癲癇」で、「水死した死霊」が憑るのであります。又よく水を見て仆れるのがありますが、之は「水へ落ちて溺れた死霊」が憑くのです。死の刹那「ア丶水は恐ろしい」といふ想念がこびり着いてゐるから、水をみると恐れるのであります。又「火癲癇」といふのは、火を見て恐れる。以前扱った癲癇で、斯ういふのがありました。それは必ず夜中に寝てゐる時に発作する。起きてる時は決してない。それは最初火が燃えるのが見へ、段々近くへ燃えてくると、意識が無くなるのであります。 之は、震災直後であったから、多分震災で焼け死んだ病人の霊に違ひないと思ひました。
以前こういうのがあった。それは一、二分間パッと意識が不明になるのであります。(その人は株式仲買の支配人をやってゐる人ですが)最初一年に一遍位起ってゐたものが、段々重くなって、終には一月に一、二回位おこるやうになった。又極度に発作を恐れる為に一種の神経衰弱になって了ったのであります。査べてみると、其人に憑いてゐるのは、昔千住の小塚原で闇打に遇って殺された霊で、無縁になってゐた為祀ってもらひたいといふのであった。最初病気が起ったのが九月の何日でしたか-丁度其日に死んだのであります。その為断へず闇打に遇ふやうな恐怖に襲はれるので一人歩きは出来なかった位であります。半年位治療する内、段々軽快に向ひ、その死霊を祀ってやったら、それっきり治ったのであります。癲癇の治療を始めると、一時は反って余計に発作し、それが或期間過ぎると、段々治るのであります。大体に於て、時日は長くかかりますが、治るのであります。
癲癇(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)