面疔

顔面の一部に腫物が出来るんですが、よく『顔の経の中心』に出来るのが質が悪いとしてあります。之は患部は腫脹し、発熱、痛苦を伴ふものである。又、口の無いのも悪いといひますが、之はそうではない。最初は口の無いのが普通で、腫れ切ってから口が出来るんであります。面疔は必ず治るもので、世間一般ではよく面疔で死にますが、之は不思議と思ふのであります。先づ、顔の一部に面疔が出来ると自然療法ですと、段々腫れて、口が出来て膿が排泄されて治るんであります。

処が、近来それを冷すので、その為に浄化作用が停止されて固まってしまふ。それ故、膿が他の方面に集溜する。その集溜個所によって『危険性』となるのです。 又もう一つは、早期に切開するのが、結果がわるいようであります。それは集溜した分だけは排除されるが、盛んに集溜しつつある後続膿は方向転換するから、つひに生命の危険さへ生ずるのである。熟練な医者は熟するのを待って切開しますが、之は非常に結果が良いのであります。本療法によれば、一回乃至三回位で完全に治ります。生命に係はるやうな事は絶対ないのであります。

(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
(医学試稿 昭和十四年)