聾は、中耳炎などの為に自然的に鼓膜が破れたのと、手術などで人為的に破ったのとあります。又其鼓膜の破れ具合によって、軽い重いがあります。然し鼓膜はなくとも相当に聞えるものであります。肩が凝ったり、首筋が凝ったりするのを治してゐる内に、今迄聞えなかった耳が聞えて来る事がよくあります。之は頸腺から耳へ水膿が入り、固結したのが溶解されるから治るのであります。ですから聾耳は先づ治療してみなければ判らないので、したがって、治療日数は最初から言明出来ないのであります。
中には、鼓膜は何とも異常がなくて聞えぬのがありますが、之は実は霊的であります。それは木龍といふて、樹木に憑依してゐる霊で、蛇の霊又は鳥霊であります。 聾といふ字は、龍の耳と書きますが、龍は声が聞えないとしてあるが、音によって聞えるのであります。蛇は、笛の音などはよく聞えるのであります。龍には種々な龍があって、木に憑いてる龍を木龍と言ひ、多く大木に憑いてゐる。松、柳、銀杏等が多いのであります。之等の木は霊が憑き易い。よく大木を伐ると祟る話がありますが、それであります。
以前横浜の生麦に大きな松があって、京浜国道を作るのにどうしてもその木を切らねばならない。先づ最初に枝を切った男は其晩に死に、次に枝を伐った男も亦死に、親方は不思議に思ってる内に病気になった例がありますが、之等は木龍の憑いてる木だったのでありませう。聾は木龍の憑依が多く、そういふのは鼓膜が何ともなく、耳には何等異常が無いのに聞えないのであります。木龍の憑いた為の聾はなかなか治り難い。之は正しい信仰によって善徳を積むより方法は無いので、其功徳によって治るのであります。
(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
(文明の創造 昭和二十七年)