睡眠に就ては、近来結核などは充分に睡眠を採らなくてはならないとされてありますが、吾々が実際研究してみますと、睡眠不足は頭脳には確かに影響があるが、結核には影響がないやうであります。然し、精神病者には大関係があります。精神病の最初は睡眠不可能からであり、精神病治癒の初めは睡眠可能からであるにみても明かであります。
然し、睡眠は習慣で或程度どうにもなる。私は曩に八時間位眠らなければどうにもならなかったのですが、近年それが不可能になった為、今は五時間位の睡眠であります。処がそれが慣れるにつれて何ともないので、睡眠不足などといふものは一時はあるが、世人が思ふ程の苦痛は無く、又それ程害がない事が判ります。彼の米国の大発明家故ヱヂソン氏は、研究室に入ると、一週間位寝ずに打通したそうであります。処がヱヂソンの助手は、自分達にはとても真似が出来ないと思ってゐると、誰でも出来るとヱヂソンが言ふのでやってみた所、最初は苦痛であったが、段々慣れるに従って出来るやうになったといふ話があります。
睡眠(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)