小児病

単に小児病といっても、其種類の多い事はよく知られてゐるが、小児病は突如として発病するものが多く、而も物心のない赤ん坊の如きは只泣くばかりで、何が何だかサッパリ判らないので、母親として只困るばかりである。先づそれからかいてみるが、生れたての嬰児に多いのは、消化不良といふ青便や泡便が出る病だが、之は消化不良といふより、母親の毒素が乳に混って出るので、つまり親の毒が子を通して浄化される訳だから、実に結構なのである。したがって、放っておけば出るだけ出て必ず治るものであるが、それを知らない医療は乳児脚気などと称し薬毒を使ふから、反って弱ったり、発育不良となったりする。之が将来虚弱児童や腺病質の因となり、年頃になると結核になり易いので、近来結核の増へるのも、右のやうな誤りが大いに原因してゐるのである。

また、生後間もなく、種痘をしたり、何々の予防注射とか、栄養の為とかいって注射をするが、之が又頗る悪い。何しろまだ体力が出来てゐないから、注射などは無理である。此為多くは発育不良の原因となり、よく誕生すぎても首がグラグラしたり、歩行が遅れたり、智能も低かったりするのはみな之が為で、医家に対し此点一層の研究を望むのである。又斯ういふのも偶にはある。それは生後一、二ケ月経った頃吐血する幼児で、医診は胃潰瘍などといふが、之は滑稽である。何となれば胃潰瘍は消化薬連続服用の結果であり、此方の原因は出産前後、母親の古血を呑んだのを吐くのであるから、其後食欲も増す事である。

先づ子が生れるや、淋毒を予防する為として、眼に水銀注射をしたり、昔からよくマクニンなどを服ますが、之も異物であるから止した方がよい。乳も成可親の乳を呑ませるやうにし、母親の乳だけで不足する場合は牛乳やミルクを呑ませてもよいが、親の乳が出ないといふ事は 何処かに故障があるからで、それは毒結が乳腺を圧迫してゐる場合と、胃の附近にある毒結が胃を圧迫し、胃が縮小してをり、其為食事は親の分だけで子の分迄入らないといふ、此二つであるから、どちらも浄霊で速かに治るのである。それからよく赤子の便が悪いと曩にかいた如く、母親が乳児脚気の為など言はれ、乳を止めさせるが、之は誤りで親の毒素が乳に混って出るのであるから、寧ろ結構である。

次によく微熱が出ると、智慧熱とか歯の生へる為などといふが、そんな事はない。ヤハリ毒の為の浄化熱であるから差支へない。又乳は誕生頃迄でよく、誕生過ぎても平気で呑ませる母親もあるが、斯ういふ児童はどうも弱いから注意すべきである。又よく風邪を引いたり、扁桃腺などで熱が出るが、之も浄化であるから結構で、それだけ健康は増すのである。それから寝冷えを恐れるが、寝冷へなどといふ言葉は滑稽である。下痢などの場合、真の原因が分らないから作った言葉であらう。だから私の子供六人あるが、生れてから一人も腹巻はさせないが、十年以上になった今日、一人も何の障りもない。又私も三十年来腹巻をしないが、今以て何ともないのである。

また、如何にして斯くも大多数の弱体児童が続出するかといふ、其原因を検討するのが順序である。それは、日本人と西洋人の体質を同一であるとする事の誤謬が抑々の原因である。それは、牛乳を多用する事と、妊婦の肉食及び姙婦と生児の薬剤服用である。何となれば、それは、薬剤に病気治癒の性能があるとすれば、其性能こそは実は毒素である。漢方医家のいふ薬剤で病気を治癒するといふ事は、実は毒を以て毒を制するのであるとは、実に至言である。之が為に、薬剤の余毒と牛乳と獣肉に含有する獣血の毒素分とが、不知不識血液を溷濁さして了ふ事である。それが人体の自然浄化作用によって残渣汚血となり、汚血の再浄化が膿汁であるから、それ等毒素が頸部附近、即ち耳下腺、淋巴腺、扁桃腺及び肺尖附近に溜結するのである。吾人が幾千人に上る弱体児童を診査するに於て、其悉くが右の症状を呈するのである。読者よ、試みに夫等児童の頸部附近を指頭で探査するに於て、必ず大中小のグリグリを発見するであらふ。そうして、指頭で圧すれば、可成りの痛みを訴えるのである。今一つの原因として、種痘によって陰性化して、肉体に残存せる相当量の天然痘毒素である。之が又、他の毒素と協同作用によって、援助するといふ一事である。 右述べた如き、二大原因が弱体児童たらしめるのであるから、此二大原因へ対して、それを軽減する消極的手段と、及び其毒素の溜結を消滅すべき積極的手段との二つが此問題を解決し得るといふ事を認識しなければならない。

其方法としては、消極的には、姙娠中肉食を避ける事と、出産後、母乳不足の場合は牛乳のみでなく、牛乳と重湯(米搗米)半々位が最も良いのであって、之は私が多年の実験上、良成績を挙げてゐるのである。又、附け加えたい事は、獣肉多食の姙婦は流産と乳不足の多い事も否めない事実である。唯然し、陰性天然痘毒素は、他の方法によって除去するより外に致方ないのである。

次に、積極的方法としては、私が創始した浄霊法である。之によれば、短時日にして解溶消滅するのである。其結果として、溜結は消滅し、微熱は去り、食欲は増進し、頬は紅潮を呈し、体重を増し、元気溌刺として、全く見違える程の健康児童となるのである。甚だ自画自讃ではあるが、今日、弱体児童をして健康児童に、而も短期に転換せしめる方法は、右の療法以外、他には絶対無いであらふ事を断言するのである。

弱体児童の防止法(新日本医術書 昭和十一年四月十三日)
小児病(文明の創造 昭和二十七年)