扁桃腺炎

扁桃腺炎であるが、之も淋巴腺附近の毒素が、日を重ねるに従ひ、扁桃腺に固結し高熱によって溶解、粘膜を破って排泄されるといふ極く簡単な浄化作用で結構なものであるが、医学はルゴール等の塗布薬を用ひ、浄化を妨害するので拗れると共に、遂に膨大し手術の止むなきに至るのである。扁桃腺は、外の方から指触すれば直に腫が判るので、診査は極容易である。ルゴール薬で焼く療法は、私も昔随分やられた。反って長びいて慢性になりやすく、焼く為に一週間も二週間もかかる。私は焼かなくなってから二、三日で治るやうになった。故に読者諸君は試みに、今度扁桃腺の発った場合、何もせず放っておいてみられたい。すると短時日で順調によく治って了ふばかりか、起る毎に段々軽くなり、遂に全治するのである。之は私が慢性扁桃腺炎を治した経験と、多数の人に教へた結果、例外なく根治したにみても確実である。

世間よく扁桃腺炎を根治する目的で、扁桃腺を除去する事が、常識のやうになってゐるが、最近の学説によれば、扁桃腺は貴重なもので、除去しない方が可いとされて来たといふ事である。全く除去した結果は他に悪影響を及ぼす事が分ったからで、実に喜ばしい限りで、私が長年唱へて来た説が、漸く認められるやうになったもので、満足に堪へないのである。

そこで扁桃腺といふ機能の意味から扁桃腺炎の原因に就いてかいてみるが、人間は誰しも上半身の毒素は、頸部淋巴腺に最も集中し易いので、そこに毒素の溜結が出来るので、大なり小なり此溜結のない人は殆んどないといってよかろう。すると此溜結毒素は出口を求めやうとし、少しづつ溶解し、一旦固まる処が扁桃腺であるから、或程度固まるや、高熱が出て溶解し、自然に穴が穿いて、毒素は排除されるのであるから、扁桃腺なるものは実に上半身毒素の掃け口とも云っていいもので、若し扁桃腺がなくなったとしたら、毒素は止むなく他の部に溜結する事となる。之が脳神経衰弱や中耳炎、歯痛、鼻の病気等の原因となるのであるから、結局小の虫を殺して、大の虫を助けるといふ結果になる。

何よりも扁桃腺除去後数年間は風邪など引かないので効果あったやうに思はれるが、何ぞ知らん年月が経つに従って色々な病気が発るのである。処が、其原因が分らない為、仕方なしいい加減な病原を付けるのである。

〔浄霊箇所〕
頸部淋巴腺

(岡田先生療病術講義録 昭和十一年七月)
(文明の創造 昭和二十七年)