結核と特効薬

結核の薬位、次々と出るものはあるまい。近年になってセファランチン、ペニシリン、ストレプトマイシン等々、之等は今随分もてはやされてゐる。恰度何かの流行のやうである。此様にそれからそれへと新薬が出るといふ事は、勿論前に出たものより効き目がより高いからであらうが、曩に詳述した如く、薬の効き目とは毒の効目であるから、毒が強い程よく効く訳で、浄化停止の力もそれだけ強いから、症状が軽減するといふ訳で、特効薬として売出されるのである。然し何れは其薬毒の浄化作用が起るから、毒の強い程浄化も強く来るといふ次第で、結果は一の苦痛を免れやうとする其方法が、二の苦痛の種を蒔くといふ事である。それが薬学の進歩と思ふのであるから、問題は実に大きいと言はねばならない。

従って有体に言えば、医学の誤りが病人を増し、薬剤業者を繁昌させ、新聞屋に多額の広告料を奉納するといふ訳で、それ以外の何物でもない事を知るであらう。憐れむべきは現代文化民族である。私が此重大事を発見し得たといふ事は愈々時期到来、暗黒界に一条の光明が射し初めたのである。勿論地上天国出現の間近い事の示唆でなくて何であらう。

(文明の創造 昭和二十七年)