気胸療法と結核の執拗性

現在の結核療法に就て注意すべき事は、今最も有効とされてゐるものに気胸療法がある。之は肺に空洞のある場合、肺胞を萎縮させて出来るだけ縮小させようとして肺の活動を鈍らせる。つまり肺の安静法で、その為空洞の原因である濃度の喀痰も固まると共に、空洞も縮小され、一時は小康を得るが、普通人の生活をするやうになると再浄化が起り、元の木阿彌となるのが殆んどである。としたら之も根本的療法でないのは勿論である。

最後に、結核が他の病気に較べて、特に執拗で治らない原因をかいてみるが、一度結核となるや、何と言っても薬物が主となる以上最初から種々の薬物を体内に入れる。それが原因となって、経過が長引くので患者は焦って凡ゆる薬物を求めるといふ鼬鼠ゴッコになり漸次体内に薬毒が溜り溜ってどうにもならなくなる。其薬毒が肉体を蝕ばむ以上遂に不治となるのである。そうなると痰迄が薬の臭ひがする位であるから、全く恐ろしい錯誤と言えよう。従って三期結核は薬毒病と言ってもいい位で、斯ういう患者を私はよく治療したが、その目的は薬毒を除るだけである。何よりも薬毒が減るに従って、漸次恢復するに見て明かである。但し此薬物を除る方法こそ私の発見した浄霊法である。

(文明の創造 昭和二十七年)