寸鉄 (光新聞四十三号)

薬で病気を作り、肥料で不作にし、親が子に教えられ、未亡人が子を孕み、科学が迷信を作るんだから、天が地となり地が天となり、何が何だか判らないのが、今の世の中さ

今の世の中は化物が多過ぎるよ、何しろバケ学を勉強するんだから

悪人が善人に化けるのは先づ化学博士だよ

エロ文学流行は怪しからんというからよく見ると、ナーンダ懐からエロ本がハミ出てゐやがら

時代の先端を行くもの、即ちアロハシャツのアンチャンと、自殺文士と、姦通代議士と、チンピラ親分、それから○○、これは曰く“言ひ難し”

三文雑誌とガラクタ新聞の氾濫、世は正に紙屑インフレ時代だよ

エロがないと雑誌は売れないそうだ、とすれば、此頃の雑誌は文化的パンパンガールだね

代議士さんは有難いものだよ、女房子を泣かして、外の女と公然と結婚が出来るんだからね

昨今読まなくてもいいような新聞が続々出るが、これは新聞屋の失業救済策なんだそうで、一種の社会事業だとはイヤハヤ

金づまり、糞づまり、行づまり、何でもつまった世の中だとしたらツマリ、つまらない世の中という事になるね

(光新聞四十三号 昭和二十五年一月一日)