柔道

私は若い頃柔道を習った事がある。元来柔道なるものは徹頭徹尾敵の力を利用して勝つので、決して敵の向って来る力を押し返すのではない。出来るだけ敵に力を発揮させそれを利用するのである。私は処世の上に於ても柔道の理を参考にする事がある。それは私の仕事を妨害するものがある場合、それを止めようとしたり、反駁しようとはしない。妨害者のしたいだけの事をさせる、或場合それを利用する。そうする事が反って妨害者の失敗を早めて解決するのである。

(自観叢書五 昭和二十四年八月三十日)