上半身の病気をかいたから、之から下半身の病気に移るが、先づ一番多い病気としては痔疾であらう。此病の原因は甚だ簡単である。つまり全身各局部に溜結してゐる毒素が少し宛溶解して、最も都合のいい肛門から出ようとするので、言はば肛門は糞尿以外の汚物の排除口も兼ねてゐるといふ訳で、神は巧く作られたものである。
そうして痔疾の中で最も多いものは脱肛といって贅肉のやうなものがはみ出る症状であるが、之も最初の内は訳なく押込ませられるが、時日の経つに従って段々大きくなり、押込め難くなる。そうなると非常に気持が悪いので、色々な手段を尽しても治らないので、煩悶懊悩してゐる人が、世の中には割合多いやうである。特に婦人が出産の折などイキミの為、脱肛になる人も実に多いが、之などは場所が場所だけに人には言へず秘してゐるので、猶更辛いであらう。元来痔疾の原因であるが此病気は先天性薬毒及び尿毒と、後天性薬毒との二種又は三種の混合毒素が下降して、肛門の周囲に一旦集結する。之が脱肛の原因であって、脱肛にも痛むのと痛まないのとがあるが、痛むのは後天性薬毒がある為である。此病気は日本人に特に多いとされてゐるが、之は全く便所の構造が悪いからであらう。今一つは便所で読書をする人がよくあるが、之が悪い。読みかけるとつい時間が長くなるからで、痔のある人は此点自省すべきである。私も若い頃随分痔で苦しんだものだが、此点に気が付き、必ず五分間以内と決め、仮へ中途であっても便所から出るやうにした処、それから自然に快方に向ったのである。
次は痔核といって、肛門の淵に疣が出来るものがあるが、之にも内痔核と外痔核とあり、前者は太ってゐる為、後者は痩せてゐる為である。之も放任しておけば、毒が溜るだけ溜って、段々大きくなり、遂に破裂して排毒され治って了ふのである。又痔出血もよくあるが、之は毒血が肛門から出やうとし、一部に亀裂が生じ、常に排血するので、気持が悪く心配するものだが、本当は結構なのである。何となれば浄化の為の毒血排泄であるから、健康上非常にいいのである。何よりも出血後頭脳の悪い人や、首、肩の凝る人などは、必ず軽快になるものである。従って脳溢血予防にも大いに役立つのである。
次に痔の病の中一番問題なのは痔瘻であらう。之は強烈な薬毒が、最初肛門の一部に固結するが、非常に痛むので、医師に診て貰ふと、必ず切開手術を行ふので一時快くなるが、例外なく其お隣りが又腫れる。復切る、復腫れるといふ訳で、遂に蜂の巣のやうになって了ひ、耐へきれない程の痛みとなる。之は手術の度に新しい薬が滲透するからで、つまり痛みの原料を増やすのだから堪らない。従って最初から何にもせず放っておけば、自然に排膿して、必ず治るものである。又痔瘻を治すと肺病になり易いとよく云はれるが、之は手術が奏効して、排膿が止まると毒素の出所がなくなるので、肺を目掛けて出ようとするからである。又駆梅療法の一種で昔から推奨されてゐるものに、水銀を臀部へ注射する方法があるが、之は数十年経ってから痔瘻と同様の症状を呈する事がある。非常に固い隋円形の尖起状のものが出来、耐へられない程の激痛がある。之も放っておけば二、三週間で全治するが、手術をすると慢性痔瘻になり易いのである。
今一つ始末の悪いのは、肛門掻痒症であるが、原因は勿論天然痘毒素及び薬毒であるが、之は放っておくも数十年かかる位で、浄霊でも数年は掛かるのである。
(文明の創造 昭和二十七年)