次に脳貧血をかいてみるが、之は脳溢血と反対であって、脳溢血は毒血が頭脳に入り、脳の血液が増へるに反し、之は脳の血液が減少の為発る病気である。では何故減少するかといふと、人体は絶へず頭脳に向って、送血されてゐるので、之が一定量なら何事もないが、其量が減ると頭脳機能の活動が鈍る。それが脳貧血である。右の如く量が減るといふ事は、頭脳へ送血する血管が、頚の周りにある毒結の圧迫によるからで、此固結を溶解しなければ治らないのは勿論である。処が医学ではそれが不可能の為、一時的姑息手段をとるより致し方ないのである。斯様な訳で脳貧血の症状は頭痛、頭重、圧迫感、眩暈等で、嘔吐感を伴ふ場合もあり、本当に嘔吐する事もある。中には汽車、電車、自動車の音を聴いただけでも、眩暈や嘔吐感を催す者もある。然し之は医学でもいふ如く、割に軽い病気で心配はないが、其割に苦痛が酷いものであるから、初めの内は相当神経を悩ますものである。
此病気を知るのは最も簡単である。発病するや目を瞑り、額に油汗をかき、嘔吐感を催す等で、其際掌を額に当てて見ると、普通より冷いのでよく判るのである。そうして浄霊の場合、首の周囲を探ってみると、必ず固結があるから、そこを溶かせば間もなく快復する。又発病するや枕無しで仰臥すると、頭へ血が流れるから多少の効果はある。今日最も多いとされてゐる神経衰弱も、脳貧血が原因である事は言ふ迄もない。
(文明の創造 昭和二十七年)