西洋医学の大誤謬(一) 病気の原因と発生

病気の原因に就て、西洋医学は未(イマ)だ何等、確定的発見がない、風邪の原因すら、未(イマ)だ以て不明であるに見ても瞭かである、西洋医学に於ての病理の説明は、肉体に現はれたる現象に病名を附し、その進行過程の説明に過ぎない、従而、その療法としては、現象に対応する、対症療法が主である、対症療法とは即ち、苦痛の軽減である、然し苦痛の軽減と治癒とは、全然別問題であって、苦痛を軽減する事に由って、病気が治癒されるとなす事は、一大誤謬である。

苦痛を軽減する対症療法が、何故に誤謬であるかを説明すれば、次の如くである、元来病気の苦痛、例へば、発熱、咳嗽(ガイソウ)、痛み、嘔吐、眩暈(ゲンウン)、不快感等、夫等の現象の本体は何であるか、之が明白にならなければ、真の治療は確立しない道理である、病気の発生には、発生すべき原因があり、病気が発生するや、同時に苦痛の発生も、その理由があるべき筈である、要するに病気の発生は、或原因に対する結果であり、その結果から生ずる結果が苦痛である、故に、苦痛の本質と、病気の原因が。

徹底的に分明されないとすれば、真の治療は確立する訳がない筈である、西洋医学は病原不知なるが故に、止む事を得ず、結果の結果である処の、苦痛軽減にのみ没頭し、研究しつつあるものである。結果を生むべきその原因の奈辺に在るやを究め得る能はず、従而其原因剿滅(ソウメツ)の工作など思ひもよらず、故に忌憚なく言へば西洋医学は、病気治療に対しては、全然無力であると言っても過言ではあるまい、西洋医学によって治癒せらるる患者は、実は、対症療法に依って、苦痛を軽減されつつ、人体自身の自然治癒力によって治癒されるのであるから一種の自然療法である。

斯の如くにして、苦痛軽減の対症療法を受けつつ、自然治癒さるれば、苦痛軽減丈の効果があるから可いが、爰に又一大誤謬が潜んでゐる、それは、苦痛軽減の方法として、薬剤と器械を用ひる、此物質的方法による、苦痛の軽減は、其結果として、何倍の苦痛増加になるといふ事である、一時間の苦痛軽減は軈て五時間も十時間もの、苦痛加重となる事である、私は斯様な事を言へば或は、奇を好む逆説とも解(ト)らるるであらふが、然し、事実は事実として一点の誤りがないから、何程でも実證するに吝(ヤブサ)かないのである。

(光明世界五号 昭和十一年一月二十五日)