憐むべき現代人

今蜜柑が出盛ってゐるので大抵な人は喰ふであらうが、之に就て注意すべき事がある。それは医学では蜜柑は実よりも皮の方が栄養があるとしてゐる。即ち皮にはヴィタミンのA、B、Cが全部含まれてゐるからといって推奨するのであるが、之等も実に間違ってゐる。全く学理に捉はれた自然無視の謬説である。

何となれば皮は実よりも不味いのは何を物語ってゐるのであらうか。全く皮は喰ふ物ではない事を神が示してゐるのであるから実を食ふのが本当だ、とすれば実に結構な話ではないか。こんな判り切った事まで判らなくなった医学の逆進歩には困ったものである。

又医学が言う処の、肴の骨にはカルシュウムがあるから食えというのと同様で、わざわざ不味くて人間の歯では噛めないようなものを食へというのは人間を猫と同様に扱う訳で、現代人は実に憐れむべきである。

(光新聞四十四号 昭和二十五年一月七日)