医学談片集 病は内から外へ

医学に於ては、病原は外部から侵入するとされてゐる。吾々の方は内部から外部へ、排泄さるるとしてゐる。全く反対である。面白い事には、此理論は人間行動の理念と一致してゐる。それは或種の考え方は外部的条件によって人間は悪を犯すといふ。即ち罪を他に転嫁するのである。それと反対の考え方は、人間の悪は自分自身の心が間違ってゐるからだといひ、罪を自分の責任に帰すのである。

右二つの考え方の結果を見ると左の如きものである。罪を他にに嫁するものは、犠牲心がなく人を怨み、社会を呪ひ、不平者となるので、斯ういふ人間が殖えると暗黒的社会となる。

之と反対に、人間が犠牲心が強く、人の罪を許し社会と和し、凡てを善意に解釈するから温かい愛の充ちた社会が出現する。

以上の意味を、よくよく玩味されたいのである。吾々の意図が奈辺にあるかが明かに知り得るであらう。

(光新聞三十七号 昭和二十四年十一月二十六日)