一千万円の渦紋 どちらが正しいか 朝日が読売の報道を覆す

十月十七日付「朝日新聞」社会面トップに掲載された「戦後派宗教」と題する記事中、本教に関する事項が報ぜられていた。即ち「新興宗教の財力はいづれも巨大だが、その筆頭はなんといっても熱海に本拠をもつ観音教で終戦直後誕生当時はわづか数百の信者を有するにすぎなかったのが、その後四年間に増大して現在届出の信徒数卅万(実際は十七、八万と文部省でみている)」

と書き出し次いで熱海附近の家屋の買収などを報じたのち「それでも足りず、現在熱海市背後の山林二万余坪に高さ五十メートルにおよぶ石垣を築いた城のような大教会堂の建築に着手、完成の暁は“地上天国”にするという」

と本教事業の概要を紹介、更に教団そのものは宗教法人だから課税の対象とならぬが、「岡田教祖個人の所得として判定されるものだけで昨年は一千五十二万円だった」と昨年一ケ年分の収入を指摘している。この記事が事実とすれば過般「一日の収入一千万円以上」と報じた読売新聞報道内容とは全く雲泥の差があり、読売の記事は一年を一日と早合点して誤報したともみられる。

それにしても読売のウソ記事が瞬く間に同業朝日の前に無残!馬脚を露したことは全く皮肉な現象だ。読売と朝日が、どちらが正しいかこれは双方の信用と権威が最後の判決を下すことであり敢えて深く追究の必要はなからう。

現在のジャーナリズムは新興宗教というといきなり興味的眼でみることがそもそもの誤りであって、新興宗教と雖も既成宗教に劣らぬ救いの力をもっているものもある。観音教は最近におけるその代表的なものゝ一つで、数十万の信徒を数年の間に得たのはなんら奇異とするところではなく実際に社会のあらゆる面において大きな治績をあげているからである。

既成宗教が不活溌となってきたことに就いて朝日新聞の前記々事に於いて渡辺楳雄博士が語っている如く世相が混乱し、明日の日も計り難いようないまの時世に未来の安心ばかり説いているより単純明確な教理で、現実の助言又は利益を説く新興宗教の方が魅力があるということも一応参考とすべきである。

(光新聞三十二号 昭和二十四年十月二十二日)