米ソ融和の霊感

現在の世界に於て、人類の苦悩は数え切れない程あるが、その最も王座を占めるものとしては米ソ問題である事は今更いう必要はあるまい。此意味に於て、もし米ソ間の諸問題が解消し、トルーマン氏とスターリン氏が握手するような時が来たとしたら、全人類は如何に救はるるであろうし世界は如何に明るくなるかは計り知れないものがあろう。

とはいうものの、吾々が此様な事を期待した処で痴人の夢以上の不可能事として相手にされない事はよく判っている。然し乍ら実現の可能性がないと思う事は現在このまゝの状態が続く事を前提としての観方であるからで、日進月歩の今日、走馬燈の如き世界は今後如何なる変化を起すかは到底予断は許されまい。一寸先も判らない人間の判断などでは判りよう筈がない。ひとり世界を主宰され給う神のみが知り給う処で、之は無信仰者と雖も想像は出来るであろう。

以上の如く、現在としては想像だも出来得ない事を吾等は確信するのである。之は信仰者のみが与えられる霊感である。

勿論、確信する吾等である以上、その実現を期し、叡智と熱意と努力を最大限に発揮させ、一大運動を起すべき事を提唱するのである。

成程、近時起ったユネスコ運動、MRA運動等も、人類平和に対し、現在の時期に適した至極有用なる運動で、吾等と雖も賛意を表するに吝(ヤブサ)かではないが、その根本としてはどうしても米ソ融和を現実化するより以上の有効なる手段はあるまい。

という事は右両運動にしてもソ連以外の国だけを対象とし反共が目的である以上、仮令、成功したとしても根本解決とはならない。ソ連の脅威は依然たるものがあろう。そればかりか、寧ろ脅威は増大するやも知れない危険があらう。此意味に於て、ソ連以外の全国家が連合してソ連に対し、武器による防備を行う一方スターリン氏初めソ連国民に対し一大平和攻勢を決行すべきである。

然らば、右の如く、平和攻勢とは、如何なる方策かといふに、キリスト教初め全世界宗教の大同団結である。数億に上る宗教人を打って一丸とした、世界創って以来の大運動を起す事である。勿論、宗教人以外の人民も能ふ限りの援助を与えるべきである。何となれば、全人類の一大脅威である第三次大戦が之によって免れ得るとしたら、甚だ安価な犠牲であるからである。

戦敗国、小日本の一角から、斯様な大それた意味の論文を提唱するといふ事は、日本流にいえば、僣越至極であるかも知れないが、吾等と雖も、人類の一員である以上全人類の福祉を念願する余り茲に世界に向って訴へんとするのである。

(光新聞三十号昭和二十四年十月八日)