霊的には無解決 「脳外科療法に革命」に就て 二十世紀医学の誤謬

昭和廿四年十二月廿六日中部日本新聞所載「脳外科療法に革命」頭を切らず精神病を治す

米国から名大へ論文「中略、米国脳外科学界の権威であるテンプル大学教授E・A・スピーゲル博士からの書信によれば、精神病やてんかん身体の脳神経障害から起る不随意運動を外科手術で治そうとする治療は今年ノーベル賞を受けたポルトガルのリスボン大学教授モニッシュ博士が創案、アメリカのフリーマン、ワッツ両博士により普及され日本では斎藤教授を中心に前頭葉白質切離術として戦後大きな発達をとげ舞踏病のような身体のフラフラする病気が手術のとたんに治るといった奇蹟的な臨床成果をあげているが、スピーゲル博士の研究はこの療法をもっと簡単にもっと効果的にした革新的研究であることがわかった。

此研究は英国のクラーク教授がサル、ネコに用いたステレオエンチエファロトーム(脳電気凝固器)を人間に応用することに成功。脳内の視丘の内背核を電気針をさして焼けばメスで白質切離をしなくとも簡単に同じ効果があるというもので四十二例の患者からつぎのような臨床例をえたと報告している。

精神病に対し電気ショックなどで十七年間も効果がなかったものが非常によい効果がでた。ガンの末期からくる痛みは非常なものでモルヒネを一日数本打っていた患者が此療法で治った、てんかんの発作をとめたり軽くしたりすることが出来た、此療法は脳に針をさしこみ電気で焼くだけだから死亡することが全然なく、またいままで行っていた脳の外部の接触からとっていた脳波よりもっと正確な脳波がとれるためいままで知られない病気などを発見することもできる--とスピーゲル博士は報告しているが、斎藤博士は喜びを次の如く語った。

スピーゲル博士は大正九年から十一年まで私がウィーン大学で研究していたときの旧友だ、スピーゲル博士の研究は革新的、世界的研究だ、さっそく日本の医学界に発表する。」

右の報告を見ただけでは、洵に劃期的発見で、人類に齎らす福音は素晴らしいものがあるが、吾々の考えでは、斯様な発見は一時的効果であって、決して病原を消滅し完全に治す事は不可能であると思う。特に癲癇や精神病の如き脳疾患は、どうも的外れのような憾がある。

吾々の常に言ふ如く、癲癇や精神病は霊的疾患であるから、霊的に解決しない限り効果はない。此点判り易くいえば、悪戯小僧がワルサをするからというので、手足を縛っておくようなものである。成程それで一時的悪戯は出来ないが、その代り人間の生活行動も出来ないから、反って困ると同様である。

医学が相変らず、物理的、機械的に執着し進歩せしめようと努力しつつあるその信念は嘉すべきも、結局は治病の真髄を衝いていないので困ったものである。随而、之に目覚めさせない限り、人類は救はれないのである。

嗚呼、医学の誤謬を如何にして覚醒さすべきかが、これこそ二十世紀後半の一大問題であらう。

(救世四十九号 昭和二十五年二月十一日)