結核と其発見法

結核発見法として現在行はれつゝある処のものは、大体ツベルクリン注射、血沈、レントゲン写真、結核菌の顕微鏡検査等の機械的方法及び微熱、咳嗽、喀痰、血痰、喀血、疲労感、倦怠感、食欲不振、羸痩(ルイソウ)等の自覚的症状によるものとである。之等に就て、私は忌憚なく検討してみよう。

ツベルクリン一名マントー氏注射なるものの液を注射するや、其部の紅潮又は腫脹を呈するものを陽性といひ、何等の反応なきを陰性といふのである。そうして陽性は既に結核菌に犯されてゐるとなし、陰性は然らざるものとするのである。故に陽性者は潜伏結核を既に保有してゐる以上、それを喰止めなければならないとして種々の注意を与へる。然るに陰性者に対しても無菌者である以上免疫力がないから、万一感染の場合、陽性よりも病気亢進が高いから、菌に犯されないやうとの意味で注意すべしといふのである。

右の如く、陽性も陰性も要注意者であるといふのであるから困ったものである。そうして注意を要するとは一体何を意味するものであらうか、之を医学に於ては、風邪を引かぬやうにする事、栄養食を摂る事、過労を避ける事、睡眠を充分とる事等としてゐるが、之等に就て、私は徹底的に解剖してみよう。

(結核の正体 昭和十八年十一月二十三日)