去る十月二十日NHKの昼間放送「ひるのいこい」の中に、左の如き話があったが、面白いと思い茲に載せたのである。その中で反対の結果に対し、農家の人達は、これはどうも解せぬといって、枯れた稲穂を前に、首をかしげて考え込んだというのであるが、これこそ全く肥料迷信の目で見た為である事がよく分る。今日の「RFD便り」は先ず水戸放送局の館野RFD通信員から届いたものをお伝えしましょう。
茨城県の「穀倉地帯」といわれる新利根川の流域も、今年は冷害やイモチ病の為に大変な被害を受けました。特に米を反当り十俵も穫ってやろうと硫安や緑肥をウンと注込んだ田圃では、稲が倒れたりイモチの為に穂が真っ黒になったりして、見るも無漸な姿になってしまいました。それにこの地方では今年は螟虫(メイチュウ)退治のために「パラチオン剤」をしこたま撒いた為、薬が効きすぎて田圃のエビガニや鰌(ドジョウ)までが死んでしまい、こんどはそれが又肥やしになって反ってイモチ病を激しくするという洵に皮肉な事になってしまいました。処がその反面手許不如意の為に思う丈の肥料をやれなかったり、又手不足の為に碌々草もとらなかった様な田圃が、反ってよく出来たりしたので、農家の人達も「これはどうも解せぬ」といった面持で、枯れた稲穂を前に首をかしげて考え込んでおります。
(栄光二百四十五号 昭和二十九年一月二十七日)