医学断片集(二十九)

近来流行の牛の脳下垂体埋没法によって、若返るとか、禿に毛が生えるとか、背が伸びるとか、皺がなくなるとか、疲れなくなるとか、まるで牡丹餅で頬ッペタを叩かれるような、うまい話ずくめなので、その専門の医師が雨後の筍のように増え、最近東京都内だけで、二百数十カ所にも及んだというのであるから驚かざるを得ない。そのため医師会の問題になり、その対策によりより合議中だが、容易に断案は得られないので困っているようである。

しかしこれを吾々から見ると、甚だ簡単な話で直ちに断案を得られるからそれをかいてみよう。いつもいう通り医学の方法は、ヒロポンと同様よく効く程一時的効果でしかないから、この脳下垂体法も効果は先ず数カ月乃至一カ年位と思えばよかろう。その先は元の木阿彌処か、体内に入れてはならない変なものが入っている以上、これが禍をして厄介な病気になり、随分苦しむ事になろう。確か十数年前に若返り手術などといって、一時流行した事があるが、これもいつの間にか煙になってしまったのは、知る人も相当あろう。

今度の方法もそれと同工異曲と思えばいい。先ず一、二年で幽霊のようになってしまうのは、断言して誤りないのである。

(栄光百九十四号 昭和二十八年二月四日)