医学断片集(十二) 脂肪肥り

世間よく脂肪肥りという言葉があるが、之は間違いである。何よりも若し脂肪で肥るものならば、肉食者は肥り、菜食者は肥らない訳だが、事実は其反対の事の方が多いのである。では肥る原因は何かというと真の健康で肥る人は寔に少なく、殆んど腎臓萎縮と薬毒の為であって、そういう人に限って身体が重く、充分働けないものである。そうして漢方薬中毒の人に肥っちょが多いもので、よく青ん膨れというのがそれである。又前者は萎縮腎で、尿の処理が悪いから浮腫が出る為であり、近来女学生などに肥っちょの多いのも、授業中などの場合男子と異って、便所へ行くのを億劫がるから、尿が腎臓の周囲に溢れて固まり腎臓を圧迫するので、其又余剰尿が身体中へ廻って、段々肥って来るので、之を吾々は小便太りと云っている。何よりもそういう人は丈夫そうに見えても案外弱く、病気に罹り易いものである。後者は薬毒が少しづつ溶けては全身的に溜るので、此肥り方は局部的、変則的が多いからよく分るのである。

(栄光百六十号 昭和二十七年六月十一日)