医学断片集(七) 信用のある医師

よくラジオ、新聞、雑誌等に病気の質問に対する応答中に、信用のある医師に診て貰えという言葉があるが、之は変な話ではないかと思う。若しそれが本当とすれば信用の出来ない医師もあるという事になろう。すると法律上正規の許可を得て医師となった以上、不信用な医師があるとすれば、厳重な制裁を与えるか、場合によっては免許を取上げるという方法もあるのだから、現在開業している医師に不信用な者はない筈である。としたら其答は当を失している訳である。

又信用があるかないかは、何を標準にしたら分るのであろうか。恐らく事実に於て不可能であろう。としたら此事も可笑しな答であると思う。今一つは右の如き質問をする人は、散々医師にかかって治らない結果、窮余の極質問するのであろうから、よく一度専門家に診て貰えなどという答も人を馬鹿にしているとしか思えないのである。

(栄光百五十二号 昭和二十七年四月十六日)