本教信者の奇蹟の多い事は、恐らく有史以来、例のない事は常に曰われている処であるが、過般京都に於ける、水害の大きかった事は、新聞で報道されているが、左記報告は、実に素晴しい奇蹟中の奇蹟で、之を読んだとしたら、信者以外の人でも、心を揺り動かさない訳にはゆくまい。処が此報告以外聞く処によれば、其時水に流された者が四十人あったそうだが、其中で此二人だけが助かって、後の三十八人は全部溺死したというのだから、何と驚くべきではなかろうか。
京都府下水害の奇蹟
濁流に転落愛児二人救わる
京都府 M・K
謹みて御守護御報告申上げます。常日頃些細な事に迄御守護頂きまして感謝致して居ります、取分け此度は長男I(二二歳)次男T(一九歳)未入信の二人の上に迄御守護頂き尊き生命をお救い頂き、親の身として自分の生命を救われたよりも尚一層嬉しく茲に拙筆を以て御礼申上げます、私去る五月一三日京都O中教会に於て御守拝授更に七月八日京都S支部に於て御屏風観音様を頂きました。其直後七月一一日京都方面に起った洪水の大浄化既に御耳に達している事と存じますが、就中私の隣村K村は、水害の中心地で山上の平和池(用水池)の堤防決壊の為瞬時にして大半の民家を押し流し四〇名の生霊を奪ったのであります、其水渦の中に巻き込まれた二人が相当な距離に流され流され乍ら大した怪我もなく救われた事は奇蹟と申す外なく、誠に有難く、感謝の涙で一杯で御座います、此処に二人に手記させまして当時の様を御報告申上げます。
私達二人は朝父の止めるのも聞かず魚取りに出掛けました、未だ其時は大した雨でもなく幾つかトンネルを抜けて三号隧道付近迄行く中物凄い豪雨と変って来ました、川は急に増水し逆巻く濁流、崖の崩壊、雨は益々激しく、今歩いている線路も危く行きも戻りも出来なくなり、山を越えてH駅に避難する事に決めました二人が二、三歩踏み出した時ドドーと、地盤がゆるんだと思うとアッと言う間もなく崩れ落ち二人は真逆様に二〇米程もある下の濁流の中へ転落致しました、五〇米程も流されたでしょうか、まっ暗な中で意識がうすれて行きます、 体の力が殆ど抜けた様になって濁流に押し流されました、気が付くと自分の傍に材木が近付いていますが、体の自由を失いどうして捉る事が出来ましょう、思わず「大光明如来様お助け下さい」と唱えました、途端材木が向きを変えたかと思うと横になって私に近付いて来ましたので捉まりました、「御守護だ御守護だったんだ」そんな考えが私の脳裏をかすめました、材木に縋り物凄い急流を押し流され乍ら岩にも当らず流れて行きました、やがてH駅の高いコンクリートの壁が見えホッとした時、再び気が遠くなって来ました、朦朧とした意識の中に突然「しっかりせよ」と高い声が耳に入りました、ハッとして私は反射的に材木を離すと岸に向って必死に泳ぎました、岸に手がふれた時は何も判らず只無意識でした、状況を見ていた人の話を後で聞くと、左に右に回り乍ら浮いたり沈んだりで、何とかして助けようと思い元気付け様と思いましたが、とても駄目だろう見殺しとは可哀相にと皆で合掌して呉れたそうで、奮然と泳ぎかけた時は、皆吃驚したと言って居られました、私は言いました、「親父が光明如来様を信仰しているお蔭でした」Tは水に落ちると同時に気が遠くなりかけました。
その時「しっかりせよ」と確かに水の中で誰かに声をかけられました、ハッとして我にかえった時は、左足の膝から下が土に埋もれています、崩れ落ちた崖土です、夢中になって右足で土を蹴ると幸いにも足は抜けましたが、渦巻きと水勢に真暗な水底をもんどりうち乍ら流されました。
五〇米程全く無我夢中です、 息苦しくなって必死に腕く力も水の流れに体は縛られどうする事も出来ず只自然の力にうちのめされて「もう駄目だ」と思った時、急に息が楽になり目の前が明るくなりました、偶然といいましょうか、流れに出て川に洗われている木の根が目につき夢中でしがみつきました、ああ助かった救われたという気持で只一時は茫然としていました、夢中だったので判りませんが、何だか不思議な気が致しました。
私は息子二人が魚取りに出て行った後も何故か不安に捉われ落付いて居られませんので、御仏壇の前に坐って一生懸命御屏風観音様に二人の御守護をお願いし、善言讃詞を奏上する事三回、何か胸が安らかに成りました、恰度其時刻二人は崖崩れの為水に落ちていたのです、そうしている所へ兄嫁が走り込んで来て「吃驚しては不可んで」と念を押し乍ら「IちゃんTちゃんが流されたらしい、崖が崩れて落ちて五分間以上もじっと見ていたが、浮上らなかったと言ってる人がある」と言うのです、もう私は口も利けません、一瞬私の顔は硬直して了いました、矢張り予感が当ったんだ、息子二人が生き返して只神様におまかせする以外道はないと再び御仏前に行って善言讃詞を唱えました、その中に村の人が来て探しに行こう見に行こうと言って呉れましたが、私はいや信仰さして頂いているのだから光明如来様にお任せすると言ってお断り致しました。
こんな気持になれた事を真実に有難く思って居ります、ただ御屏風観音様にお任せする気持で一生懸命善言讃詞を上げていました、一時間程たった頃亦兄嫁が走って来て「IちゃんがH駅で上った」と言うのです、「でもTちゃんは駄目や二人共死んでも仕方がないのだから、諦めや」と言って泣くのです、気の早い話ですが座敷には仏を寝かす心算で、布団を敷き人を迎える準備迄整えました、そこへ近所の女の子が走って来て「おじさん、IちゃんもTちゃんも二人共帰って来やはった」と言うのです、ほんとか、表へ走り出て見ますとTは濡れたものを肩にかけ笑い乍ら近所の人と話しています、幽霊じゃないか私の目を疑いました、でも間違いありません、初めて涙が流れました、御仏壇の前に坐ると只有難くて声も出ず、只管御礼申上げました、兄弟二人も亦私の後に坐って御守護の御礼申上げました、鳴呼何たる奇蹟、入信早々の斯る大御恵を戴き御守護頂きました事を、只有難く御礼申上げると共に、尚一層の御神業の御手伝いに励まして頂きます。
明主様誠に有難う御座いました。
(栄光百二十号 昭和二十六年九月五日)