新旧文化の交代

抑々現代文化は、数千年以前の原始時代に比べると、驚くべき進歩発達を遂げ、又遂げつつある事は、今更贅言を要しない処であるが、こうなる迄には人類は如何に苦心努力して来たかは、彼の天災、戦争、病魔等に対し、惨澹たる苦闘を続けつつある人類史がよく物語ってゐる。

斯様に、人類が進歩発達を目指して来た裏には、此世界をして恒久平和な万人が、より幸福な世界たらしむべき、意図であったのは言ふ迄もないが、其理想実現の手段として、何でも彼んでも物質文化さへ進歩発達させればいいとして、唯物科学を唯一のものとし、脇目もふらず進んで来たのである。新発見や新発明が生れる毎に人類は称讃し、謳歌し、之によって人類の福祉は増進されるとなし、一歩々々理想に近づきつつあるを想ひ、幸福の夢を追ふて来た事は誰も知る処である。

然るに、科学の進歩は、遂に原始核破壊の発見に迄及んだのである。此大発見は本当から言えば、大いに祝福すべきに拘はらず、意外も意外、逆に一大恐怖的発見であった。