肺炎

近来、肺炎は非常に殖えた病気の一つである。之は、非常に旺盛なる浄化作用であるから、虚弱者には少く、健康者に最も多いのである。此病気の原因は、感冒浄化作用停止によって累積溜結せる毒素が、急激に烈しい浄化作用が発るので、此毒素の大部分は肋骨及び肋間に溜結せるものである。此浄化作用によって一時の浄化作用の高熱によって一時に溶解せる膿が、肺臓内へ浸潤し肺の下部(乳頭部より以下)に溜積するのである。然るに、その溜積せる膿汁を排泄するに容易ならしむる為、高熱は尚肺臓内に於て膿解作用が行はれるのである。此際、肺の下辺部又は其背部に手を触るれば、火の如く高熱を感ずるにみて瞭かである。其際喘音が特徴であるが、それは肺臓内に滞溜する喀痰が呼吸の為に動揺する響きである。そうして、高熱によって溶解せる喀痰は咳によって排泄し治癒するのである。

然るに、其際医療は、湿布、氷冷、服薬、注射等を行ふ為に滞溜せる喀痰は、肺臓内に凝結するのである。此凝結作用によって呼吸困難が起るのである。何となれば、元来肺臓は必要なる一定量の空気を吸収すべきものなるに、滞溜喀痰の容積だけは肺の量が縮小される訳であるからである。例へば、十吸ふべき空気量を三だけ減小されるから七だけしか吸収出来ない。従而、呼吸の回数を多くしなければ、必要の空気量が得られないのである。それが呼吸困難の原因である。であるから、此呼吸困難が持続する為、心臓が衰弱する為死に到るのである。

(医学試稿 昭和十四年)